□葵文(あおいもん)・・・二葉葵を写実、図案化したもので、賀茂神社の神紋であることから加茂葵ともよばれます。通常葵文の葉は2枚で、神社と縁が深い徳川家が三つ葉葵を家紋とし、一般の使用を禁止したことから江戸時代以降に三つ葉葵の分葉はほとんど見られなくなりました。
□秋草紋(あきくさもん)・・・秋の野に咲く草や花の図柄で、萩(はぎ)、女郎花(おみなえし)、撫子(なでしこ)、桔梗(ききょう)葛(くず)、薄(すすき)、藤袴(ふじばかま)などがあります。季節をいち早く取り入れるため、夏の絽の訪問着や夏帯などによく使われています。
□揚羽蝶文(あげはちょうもん)・・・大型の蝶が羽を広げて飛んでいる様子を描いた図柄です。毛虫から美しい蝶になることから命の再生と解釈され吉祥柄になり、立身出世、延命長寿、夫婦円満などの意味があります。古くは平家が家紋としており、現在でも振袖や留袖、帯などに用いられています。
□麻の葉文(あさのはもん)・・・正六角形を基調とした菱形が組み合わさって構成された幾何学的な連続文様です。形が麻の葉に似ていることからこの名が生まれました。麻は丈夫でまっすぐに成長することから産着や子供の下着などに使われた他、建築や漆器品などにも広く用いられています。
□葦雁文(あしかりもん)・・・葦が風にたなびき、雁(鳥)が飛来する様を描いた秋の文様です。葦は和歌にも詠まれており古くから親しまれていました。江戸時代以降には友禅染の小袖にも多く用いられ、現在では風流な文様として訪問着などにも使われています。
□葦手文(あしでもん)・・・水辺風景の中に、文字を葦がたなびいたように絵画的に描いた文様です。葦手の「手」は文字の意味です。色紙の他に、蒔絵や衣服の文様としても、広く持ちいられています。
□網代文(あじろもん)・・・竹や葦、檜皮を薄く削って互い違いにくぐらせて編んだものを網代といい、茶室の天井や垣、笠など広く使われていました。その形を図柄としたものが網代文です。連続文様で着物の地紋などにもよく用いられる文様です。
□網干文(あぼしもん)・・・漁に使う網を棒に吊るし、三角錐状に干されている様子を文様化したものです。海辺の風景の中に葦や飛鳥、松、梅などと組み合せて描かれることがよく見られます。友禅染の絵柄としてよく用いられています。
□網目文(あみめもん)・・・魚や鳥をとるために用いた網の網目を図柄とした連続文様です。お茶碗や急須などの当時の絵付けなどに用いられ、着物では江戸時代に多く使われていたようですが、現在では地紋に使うことが多い文様です。
□雨文(あめもん)・・・長短の斜線で雨を表現した天象文様の一つです。農耕中心の社会にあった日本は、降る雨を神のおかげと信じ、その影響から雨文という日本独特の文様を生み出しました。古くは浮世絵に、現在でも染めの着物などにこの文様が使われています。
□荒磯文(あらいそもん)・・・美しい曲線で波を表し、その間にの間に鯉が跳ねる様子を織り出した吉祥文様です。中国、明時代末期に作られたとされており、江戸時代末以降に岩や千鳥を添えた図柄も多様化しました。現在では帯やおしゃれ着用の着物に使われています。
□有栖川文(ありすがわもん)・・・シカや馬、飛龍などを菱形やたすき型、長八角形などで囲んだ文様です。南蛮船により渡来した錦の色糸を使用して織った本来は色彩豊かな絹紋織物ですが、その美しさから染の技法でも用いられるようになりました。
□筏文(いかだもん)・・・丸太や竹を並べて藤蔓や縄などで結んで水に浮かべた筏を図柄とした文様です。筏に桜などの花を乗せたり吹雪を添えた文様を花筏文といいます。その他にも人を乗せて風景画のように染めたものも見られます。
□井桁文(いげたもん)・・・井戸の縁を木や石で四角に組んだものを井桁といい、その形を図柄化した文様です。正方形のものを井桁、斜めを井筒といいましたが、今では混用されています。染・織共に用いられ、現在は磁気や手ぬぐいなどのに多く使われています。井桁の中に「三」を入れた文様を井桁三といい、三井グループ企業のシンボルマークとして使われています。
□市松文(いちまつもん)・・・黒と白など異なった二色の正方形を交互に並べた文様で、古くは石畳文とよばれていましたが、江戸時代に歌舞伎役者の佐野川市松がこの柄を袴に用いた舞台が人気を博し、市松文様とよばれるようになりました。最もシンプルな幾何学模様は和洋問わず古くから様々なものに使われ、現在でも世界中で愛され親しまれています。
□銀杏文(いちょうもん)・・・銀杏の葉は中央に切れ込みがある扇型の葉で、その形の面白さから様々な文様に使用されてました。散ると鶴が飛ぶ姿に似ていることも舞鶴に例えられ、葉は扇型に似ていることから縁起物、さらには銀杏の木の樹齢が長いことから長寿・長命の意味も込められました。
□糸巻文(いとまきもん)・・・大正時代頃まで使われていた糸を巻き取る道具を文様としたものです。長い糸から長寿、子孫繁栄、糸が結ぶものであることから良縁の願いも込められました。花々をあしらった可憐な柄が多く、女児用の着物や帯などに使われています。
□稲妻文(いなずまもん)・・・雷文ともよばれ、直線が何本も屈折し稲光を表現した文様です。菱形構成の図柄が多くみられます。稲妻は豊作の兆しとして古くから崇められてきました。現在では器物や着物の地紋などに使われています。
□稲文(いねもん)・・・束ねた稲を文様化したものです。衣装に稲文が使われるのは比較的少なく、豊穣や富貴の願いを込め稲束を丸く図案化して紋章として用いられてきました。
稲荷神社の神文としても歴史があります。
□入替文様(いれかわりもんよう)・・・三角や四角で大きさや形の同じ文様と地が交互に入れ替わりどちらが地なのか区別がつかない図柄です。白生地や帯の地紋、小紋などの文様に使われています。
□兎文(うさぎもん)・・・兎を図柄とした文様です。兎は多産であることから子宝や家の繁栄、その長い耳から情報通や人の言葉に耳を傾けるなどの願いが込められました。また、「因幡の白兎」に起因して兎文は波との取り合わせがよくみられ、波紋から火災除けの願いもあるようです。
□渦巻き文(うずまきもん)・・・螺旋形を描きながら中心から外へ向かって広がる幾何学模様で、渦を巻き流れる水を表現しています。古くは縄文土器にもつけられた図柄で広く愛されてきました。現代の染色にも多くみられ、おしゃれ着や浴衣、帯の柄などに浸かれています。
□団扇文(うちわもん)・・・団扇の形を図柄化した文様です。団扇は中国から伝えられ、古くは風をおくるだけでなく、権威を象徴する儀式の小道具として使われていたようです。団扇には円形と、方形、相撲の行司が使う軍配や天狗の持ち物の羽団扇などがあります。現在は夏の訪問着や浴衣に用いられています。
□梅文(うめもん)・・・梅の文様で写実的、図案化など、様々な意匠校正で用いられています。梅は寒中にさきがけて咲くことから吉祥文様とされています。絵画や工芸品はもちろん、着物や帯の柄としても好まれています。
□瓜文(うりもん)・・・へちま、すかか、とうがん、かぼちゃ、きゅうり、夕顔などのウリ科の植物をモチーフにした文様です。実や葉の形が面白く、現在でも染の着物などに用いられています。
□鱗文(うろこもん)・・・三角形が積み重なった幾何学模様で、魚類や蛇の鱗に似ているため鱗文と呼ばれるようになりました。厄除けの意味があり、帯や長襦袢に用いられています。
□雲霞文(うんかもん)・・・古くからある雲や霞を表現した文様です。金銀などで描かれ、遠山や風景文様の区切りなどに使われます。
□雲文(うんもん)・・・雲の形を意匠化した文様です。形状によって宝雲門、雲雷門、流雲文、雲龍、霊芝雲文などがあります。雲流、霊芝雲文は吉祥紋として用いられています。
□江戸小紋(えどこもん)・・・小紋とは模様を大形、中形、小形というふうにわけたとき、小形模様のものを示します。小紋が江戸小紋をさすようになったのは江戸時代に小紋染の衣服が流行してからといわれています。代表的なものに鮫小紋、行儀、通しなどがあり、鮫や通しは格も高く文を入れることで色無地と同格に用いることができます。
□海老文(えびもん)・・・伊勢海老を写実、丸く図形化した図柄をいいます。髭が長く腰の曲がった海老は長寿をを意味するものとしてめでたい海の幸とされ、古くから祝い事に用いられてきました。衣装にも慶びの文様に海老文が使われ、歌舞伎衣装や浴衣、漁師のはんてんなどにも好まれました。
□箙文(えびらもん)・・・矢を入れる道具を箙と言い、それを意匠化したものです。武士の衣裳の文様に好まれて使われていました。現代でも訪問着や付け下げなどに梅などを組み合わせた図柄を見ることができます。
□円文(えんもん)・・・丸文ともいい、円形の中にその他の文様を収めた文様です。
□老松文(おいまつもん)・・・年月を経た見事な枝ぶりの松を文様化したもので、多くは写実的に表現されています。婚礼衣装などめでたい文様として使われるほか、留袖や袋帯など礼装用などににも使用されています。
□団扇散らし文(おうぎちらしもん)・・・開いた扇や閉じた扇などを散らした文様です。扇は末広がりで縁起がよく、庶民的な味わいがある文様として親しまれています。
□扇文(おうぎもん)・・・扇を広げた形や半開きの形の文様で扇の中に草花などが描かれていることが多くみられます。末広がりの縁起の良い吉祥文様として愛され、現代でも留袖や袋帯など礼装用に使われます。
□桜楓文(おうふうもん)・・・春の桜の花と秋の楓の葉を混ぜた文様です。古くから絵画の題材とされ、京都智積院の「桜楓図」などが知られています。春にも秋にも着ることができ季節を問わない文様です。
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